ベレー帽のおじさん その4

 ある日、束はあまりきたことのない、バス駅の前を通ると、黒い皮かばんをもったおじさんが、かぎをガチャガチャならしながら、郵便箱をあけて中の手紙を出しているところです。

束はびっくり、思わずききました。

「おじさん、その手紙どうするの?」

「ああこれはね、ひとところへ集めて、またそれぞれのあてなのところに汽車や自動車で送るんだ」

「ふうん。じゃあ、もう郵便箱は月夜がきても、手紙を持って飛んでいかないんだね?」

 郵便やのおじさんは思わず目をぱちくりしてきき返しました。

「な、なんだって? だれがそういった?」

「もう死んだけれどね、ぼくの大好きなおじいちゃんだよ。月夜になると円盤のように飛んでってさ、あて名の家に届けてくれるんだって」

 それを聞くと、郵便やさんは笑いました。

「そうだ。ぼくもきっとおじいちゃんのいうとうりだと思うよ。この郵便箱はだいぶ年寄りになったから、かわりに配達するのさ」

 郵便やさんはきっと童話のすきな人だったのでしょう。そういいながら、かばんの口をあけて手紙を全部いれました。

中にはまだ別の手紙がはいっています。ほかにも年寄りになった郵便箱があるのでしょうか?

 郵便やさんはさようならというと、自転車にのって、ペダルを踏みながら口笛を吹きつつ帰ってゆきました。

「郵便箱さん、年をたべたの、かわいそうにね・・・・」

 束は赤い郵便箱にいいました。

次のページへ

目次へ戻る