マッチ売りの少女(3)

赤い郵便箱は速力を落として、だんだん下におりてゆきました。束の足に触れるようにして馬車が走ってゆきました。雪の中にリンリンと鈴の音を響かせながら。

赤い郵便箱は、こおりついた石畳の道をゆっくりと飛んでゆきます。家々はみな表戸を閉じています。でも、中ではストーブを燃やして、暖かい部屋で丸焼きのガチョウのご馳走を食べているのかもしれません。

ふと見ると、町並みの中に一軒が引っ込んで、ちょっと空き地になった所があります。その家の軒下の石段にひとりの女の子がうずくまるようにして、腰を下ろしていました。道子ちゃんは、それを見ると叫びました。

「あ、マッチ売りの少女だわ!」

少女のまわりには、燃えさしのマッチの棒が、いくつも落ちています。束も道子ちゃんも郵便箱から降りて、そっと近づきました。

このブロンドの少女の髪の毛にも粉雪が積もり、はだしの足は、半分ほど雪の中にうずまっています。長いまつげをしっかり閉じた少女の白い顔は、凍りついたようです。もしかしたら、凍え死んでいるのではないでしょうか?

でも、このみすぼらしい身なりの少女の顔の、なんと美しいことでしょう。

道子ちゃんは、そっと少女のかたに手を置いて軽くゆすぶりました。

「マッチ売りさん、ねえマッチ売りの少女さん・・・・。」

それでも、このかわいい口元は、ひらかれそうにありません。

道子ちゃんは、自分の赤いセーターを惜しげもなく脱いで少女に着せて肩を抱くと自分の体温で暖めてやりました。

次のページへ

目次へ戻る