自然のおきて(2)

留守居をしていたおかあさんは、あんじていた二人が、こんにゃくを全部売って、意気揚々と帰ってきたので、とても喜びました。

「おとうさん、ごくろうさま。束も大変だったろ、すぐお風呂を沸かすからね。」

と、にこにこしながら、したくにかかろうとしました。束は、お母さん目をつむってて、と言いながら、土産に買ってきた桃色の首飾りを、お母さんにかけました。白いお母さんの顔によく似合います。

「まあ!」

びっくりたようにいうと、お母さんはいそいそとかがみにうつしてみました。

「うれしういわ!ありがと。」

と二人に頭を下げました。お母さんが喜んだので、束も満足して、にこにこと見てきた港まつりの様子を、目を丸くして話しました。

そのとき、お店のガラス戸をがらり!といきおいよくあけて、ふとったおじさんがはいってきました。この人は、おらがさんとみんなが呼び、村の村会議員をしています。

「やあ、こんにゃくやの大将。今日、商売から帰ってきたのかね。」

とあいさつがわりに言うと、すぐに、

「おらが家にな、いま、村の駐在所のおまわりさんが来てな、待ち方の中学生が8人ほど、黒岩だけに登るといって出たまま、まだ帰ってこんというんじゃ。親父さんが心配してな、おまわりさんとこに、おらが村も協力してほしいと申し出たんじゃよ。何とかならんじゃろか。」

黒岩岳。それは昔から、子供だけで登ってはいけない山です。

この地方の屋根と言われた黒岩岳と、その一連の山に登る人たちにとって、束の村は登山口になっていました。

 

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